犬とハサミは使いよう 5 感想

 夏野霧姫――死す!?

「全部、同じじゃないですか」秋山忍と秋月マキシ渾身の作品を、そう切り捨てた異形の作家、姫萩紅葉。
死した彼女の兄にして担当編集、姫萩九郎の遺志を継ぎ、俺たちは紅葉に会うため彼女の住む孤島に乗り込んだ。
といっても兄、蘇ってるけどな、カラスになって。
しかも島には立ち塞がる大量の罠と"箒"を構える最恐メイド。って何ソレ!?
数々の障害によって夏野とはぐれた俺たちに、メイドは告げる。「――あの女なら、死んだよ」

というあらすじから始まる犬ハサシリーズ第5巻。
 とりあえず、主人公の周りには変態しか集まってこない!本の見開きのイラストで出てきた買った本を間違えたかと思うほどの威圧感を醸し出している武装メイド。珍しく常識人のお兄さんが登場したと思ったら、単なるシスコントラップ好きのカラス。何?存在自体がトラップ?いや、ホントに(笑
 前巻での姫萩紅葉の「優れているとか、劣っているとか、短いとか長いとか美しいとか醜いとか好きだとか嫌いだとか興味深いとか興味薄いとか気に入るとか気に食わないとか気にするとか気にも留めないとか気持ち良いとか気まずいとか――」「全部、同じじゃないですか」という歪んだ考え。(長いっすね)それを矯正するべく紅葉の住む島へと向かう霧姫たちを書いたのが今回の5巻です。
 案の定島はトラップだらけであり、そのトラップへと真っ先に特攻していく変態たち。トラップって変態のためにあったんですねー。ツッコミどころはどこにあるんだっ!?ってなぐらいぶっ飛んだ人(動物)たちがぶっ飛んだバトルをしたりと大忙しです。そんな道中での霧姫の垣間見せるデレがたまらなかった!めったに見せないからこその強烈なインパクトでした。反則です。
 話を戻すと、今回の一連の流れの中で一番心に訴えかけていたと思うのは「作家と読者の繋がり」です。作家なのに自分以外に対する感覚がごっそりと欠けている紅葉に、読書バカである和人が「本の先には読者がいる」「作家から読者へ投げかける想い」「読者が作家から受け取る想い」があるということを存分にぶつけました。そんな繋がりこそが他者へと向き合う一歩なのかなと思いました。
 巻末には心が変化し始めた紅葉。死後に動物として蘇った主人公たちの謎の共通点などがちらっとでてましたがどうなるのでしょう。今後とも目が離せないです。

 秋ごろには短篇集第2弾の『Dog Ears 2』が発売される予定とのこと。
「この七つの海にその美しさが轟き渡る秋月マキシ様が活躍するに決まってるわよね!?」
「「「「YES!マキシ様の言うとおり!!」」」」