九十九の空傘 感想

九十九の空傘 (ガガガ文庫)

九十九の空傘 (ガガガ文庫)

 RIGHT×LIGHTで有名なツカサ先生の作品です。物語の序盤から何処と無く世界から断絶されているかのような幻想的な雰囲気を醸しだしてます。お話全体をまとめると、滅んでしまった世界の中で生き続ける、人の「想い」から生まれた九十九神たちの物語です。見た目はおとなしい印象だが物怖じしないまっすぐな性格のカサ(主人公)という女の子と、ハードボイルドを演じ、周囲から恐れられるも実のところ引きこもり系でお人好しなシグが紡いで行きます。九十九神たちの存在と世界の関連性など多少説明不足感は否めないけれど、世界観としてはとても好きな部類に入りますし、何よりそれぞれのキャラたちの優しさが全面に押し出されています。唯一個人的に残念だと思ったのが、主人公であるカサの行動理念がいまいちはっきりしないところです。「悪い人の方が信用できる」という言葉を裏付ける何かが過去にあったと見るか、単純に悪ぶっている子は実は優しいという見方なのか。
 滅び行くではなく、滅んだ世界で、人であったモノたちの思いが宿った九十九神たちの寂しい雰囲気や、そこにある一縷の優しさがにじみ出た良い雰囲気の作品だったと思います。